ツブヤキ屋台《25話》
【灯台もと暗し】
もうすぐ48歳の諸生。中学校の時には自転車通学であった。あれから何年経っただろう。
単純に33年前である。
社会人になり車を乗り、遠くまで通勤していた。便利だと思っていた。買い物も、遊びに行くのも全部、車移動して楽だと思った。
昨年、飲酒運転で免許取り消しと40万円の罰金を払った。2年間は自動車免許はない。
会社を辞めた。
ハローワークに行った。そして、自転車を買った。中学校の近くの小さな建材屋の事務員募集に応募した。
面接日になり、会社を訪ねた。
応接室で社長が、中学校の先輩と知った。
大柄の割には物静かな人だった。
内定して、4月から勤務している。
毎朝、自転車での通勤となった。
車と違い、脚を使った移動で有酸素運動にもなる。ただ、契約は事務員の産休代替である。事務員の仕事は経験がない。引き継ぎにも時間がかかるだろう。覚えたら、産休復帰で、会社を去らなければならない。
別に構わないと思った。
諸生、この道一筋の建築現場の管理職。
ただ、車の免許がないと辛い。
そんな事を思いつつ、女性だけの部屋で引き継ぎをしていると、社長が?
資材置き場にある、ブルドーザの練習をと言って、配送係の運転手に声を掛けた。
運転手の言う通りに、敷地内で練習した。
バックホーなら運転出来るのだが?
まぁ、それなりに運転し、運転手からも上出来です!と言われた。
しかし、社長は何を求めているのか?
1級の建築、土木の国家資格が物を言っているのだろうか?
でも、出来ることなら、この社長の所で最後にしたいとも思っている。
こんな近くに、たとえ小さな建材屋でも、雰囲気の良い会社があったとは?
足元に転がっていた。